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一夕話 立即阅读

作者:芥川龍之介    阅读:1135    喜欢:1    语言:日语

「何しろこの頃は油断がならない。和田さえ芸者を知っているんだから。」藤井と云う弁護士は、老酒の盃を干してから、大仰に一同の顔を見まわした。円卓のまわりを囲んでいるのは同じ学校の寄宿舎にいた、我々六人の中年者である。場所は日比谷の陶陶亭の二階、時は六月のある雨の夜、――勿論藤井のこういったのは、もうそろそろ我々の顔にも、酔色の見え出した時分である。「僕はそいつを見せつけられた時には、実際今昔の感に堪えなかったね。――」

一番気乗のする時 立即阅读

作者:芥川龍之介    阅读:1109    喜欢:6    语言:日语

僕は一体冬はすきだから十一月十二月皆好きだ。好きといふのは、東京にゐると十二月頃の自然もいいし、また町の容子もいい。自然の方のいいといふのは、かういふ風に僕は郊外に住んでゐるから余計そんな感じがするのだが、十一月の末から十二月の初めにかけて、夜晩く外からなんど帰つて来ると、かう何ともしれぬ物の臭が立ち籠めてゐる。それは落葉のにほひだか、霧のにほひだか、花の枯れるにほひだか、果実の腐れるにほひだか、何んだかわからないが、まあいいにほひがするのだ。そして寝て起きると木の間が透いてゐる。

立即阅读

作者:芥川龍之介    阅读:1103    喜欢:0    语言:日语

自分の今寝ころんでゐる側に、古い池があつて、そこに蛙が沢山ゐる。池のまはりには、一面に芦や蒲が茂つてゐる。その芦や蒲の向うには、背の高い白楊の並木が、品よく風に戦いでゐる。その又向うには、静な夏の空があつて、そこには何時も細い、硝子のかけのやうな雲が光つてゐる。さうしてそれらが皆、実際よりも遙に美しく、池の水に映つてゐる。蛙はその池の中で、永い一日を飽きず、ころろ、かららと鳴きくらしてゐる。ちよいと聞くと、それが唯ころろ、かららとしか聞えない。が、実は盛に議論を闘してゐるのである。蛙が口をきくのは、何もイソツプの時代ばかりと限つてゐる訳ではない。

飯田蛇笏 立即阅读

作者:芥川龍之介    阅读:1046    喜欢:0    语言:日语

或木曜日の晩、漱石先生の処へ遊びに行っていたら、何かの拍子に赤木桁平が頻に蛇笏を褒めはじめた。当時の僕は十七字などを並べたことのない人間だった。勿論蛇笏の名も知らなかった。が、そう云う偉い人を知らずにいるのは不本意だったから、その飯田蛇笏なるものの作句を二つ三つ尋ねて見た。赤木は即座に妙な句ばかりつづけさまに諳誦した。しかし僕は赤木のように、うまいとも何とも思わなかった。正直に又「つまらんね」とも云った。すると何ごとにもムキになる赤木は「君には俳句はわからん」と忽ち僕を撲滅した。

鴉片 立即阅读

作者:芥川龍之介    阅读:1030    喜欢:0    语言:日语

クロオド・フアレエルの作品を始めて日本に紹介したのは多分堀口大学氏であらう。僕はもう六七年前に「三田文学」の為に同氏の訳した「キツネ」艦の話を覚えてゐる。「キツネ」艦の話は勿論、フアレエルの作品に染みてゐるものは東洋の鴉片の煙である。僕はこの頃矢野目源一氏の訳した、やはりフアレエルの「静寂の外に」を読み、もう一度この煙に触れることになつた。尤もこの「静寂の外に」は芳しい鴉片の匂の外にも死人の匂をも漂はせてゐる。「ポオとボオドレエル」兄弟商会の造つた死人の匂をも漂はせてゐる。

おしの(结束) 立即阅读

作者:芥川龍之介    阅读:1018    喜欢:0    语言:日语

ここは南蛮寺の堂内である。ふだんならばまだ硝子画の窓に日の光の当っている時分であろう。が、今日は梅雨曇りだけに、日の暮の暗さと変りはない。その中にただゴティック風の柱がぼんやり木の肌を光らせながら、高だかとレクトリウムを守っている。それからずっと堂の奥に常燈明の油火が一つ、龕の中に佇んだ聖者の像を照らしている。参詣人はもう一人もいない。そう云う薄暗い堂内に紅毛人の神父が一人、祈祷の頭を垂れている。年は四十五六であろう。額の狭い、顴骨の突き出た、頬鬚の深い男である。床の上に引きずった着物は「あびと」と称える僧衣らしい。

お時儀(时事) 立即阅读

作者:芥川龍之介    阅读:993    喜欢:0    语言:日语

保吉は三十になったばかりである。その上あらゆる売文業者のように、目まぐるしい生活を営んでいる。だから「明日」は考えても「昨日」は滅多に考えない。しかし往来を歩いていたり、原稿用紙に向っていたり、電車に乗っていたりする間にふと過去の一情景を鮮かに思い浮べることがある。それは従来の経験によると、たいてい嗅覚の刺戟から聯想を生ずる結果らしい。そのまた嗅覚の刺戟なるものも都会に住んでいる悲しさには悪臭と呼ばれる匂ばかりである。たとえば汽車の煤煙の匂は何人も嗅ぎたいと思うはずはない。

三人の百姓(三个农民) 立即阅读

作者:秋田雨雀    阅读:847    喜欢:0    语言:日语

昔、ある北の国の山奥に一つの村がありました。その村に伊作、多助、太郎右衛門という三人の百姓がありました。三人の百姓は少しばかりの田を耕しながら、その合間に炭を焼いて三里ばかり離れた城下に売りに行くのを仕事にしておりました。三人の百姓の生れた村というのは、それはそれは淋しい小さな村で、秋になると、山が一面に紅葉になるので、城下の人たちが紅葉を見に来るほか、何の取柄もないような村でありました。

良夜 立即阅读

作者:饗庭篁村    阅读:832    喜欢:0    语言:日语

予は越後三条の生れなり。父は農と商を兼ねたり。伯父は春庵とて医師なり。余は父よりは伯父に愛せられて、幼きより手習学問のこと、皆な伯父の世話なりし。自ら言うは異な事なれど、予は物覚えよく、一を聞て二三は知るほどなりしゆえ、伯父はなお身を入れてこの子こそ穂垂という家の苗字を世に知らせ、またその生国としてこの地の名をも挙るものなれとて、いよいよ珍重して教えられ、人に逢えばその事を吹聴さるるに予も嬉しき事に思い、ますます学問に身を入れしゆえ、九歳の時に神童と言われ、十三の年に小学校の助教となれり。

あばばばば(小儿乖乖) 立即阅读

作者:芥川龍之介    阅读:813    喜欢:0    语言:日语

保吉はずつと以前からこの店の主人を見知つてゐる。ずつと以前から、――或はあの海軍の学校へ赴任した当日だつたかも知れない。彼はふとこの店へマツチを一つ買ひにはひつた。店には小さい飾り窓があり、窓の中には大将旗を掲げた軍艦三笠の模型のまはりにキユラソオの壜だのココアの罐だの干し葡萄の箱だのが並べてある。が、軒先に「たばこ」と抜いた赤塗りの看板が出てゐるから、勿論マツチも売らない筈はない。彼は店を覗きこみながら、「マツチを一つくれ給へ」と云つた。