或阿呆の一生在线阅读

或阿呆の一生

Txt下载

移动设备扫码阅读

四十七 火あそび

彼女はかがやかしい顔をしてゐた。それは丁度朝日の光の薄氷うすらひにさしてゐるやうだつた。彼は彼女に好意を持つてゐた。しかし恋愛は感じてゐなかつた。のみならず彼女の体には指一つさはらずにゐたのだつた。

「死にたがつていらつしやるのですつてね。」

彼等はかう云ふ問答から一しよに死ぬことを約束した。

「プラトニツク・スウイサイドですね。」

「ダブル・プラトニツク・スウイサイド。」

「ええ。――いえ、死にたがつてゐるよりも生きることにきてゐるのです。」

彼は彼自身の落ち着いてゐるのを不思議に思はずにはゐられなかつた。

1.90%
四十七 火あそび