それは木の芽の中にある或ホテルの露台だつた。彼はそこに画を描きながら、一人の少年を遊ばせてゐた。七年前に絶縁した狂人の娘の一人息子と。
狂人の娘は巻煙草に火をつけ、彼等の遊ぶのを眺めてゐた。彼は重苦しい心もちの中に汽車や飛行機を描きつづけた。少年は幸ひにも彼の子ではなかつた。が、彼を「をぢさん」と呼ぶのは彼には何よりも苦しかつた。
少年のどこかへ行つた後、狂人の娘は巻煙草を吸ひながら、
「似てゐません。第一……」
「だつて胎教と云ふこともあるでせう。」
「あの子はあなたに似てゐやしない?」
彼は黙つて目を