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煙管

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河内山宗俊こうちやまそうしゅんは、ほかの坊主共が先を争って、斉広なりひろの銀の煙管きせるを貰いにゆくのを、傍痛かたわらいたく眺めていた。ことに、了哲りょうてつが、八朔はっさくの登城の節か何かに、一本貰って、嬉しがっていた時なぞは、持前の癇高かんだかい声で、頭から「莫迦ばかめ」をあびせかけたほどである。彼は決して銀の煙管が欲しくない訳ではない。が、ほかの坊主共と一しょになって、同じ煙管の跡を、追いかけて歩くには、余りに、「金箔きんぱく」がつきすぎている。その高慢と欲とのせめぎあうのに苦しめられた彼は、今に見ろ、おれが鼻を明かしてやるから――と云う気で、何気ないていを装いながら、油断なく、斉広の煙管へ眼をつけていた。

すると、ある日、彼は、斉広が、以前のような金無垢の煙管で悠々と煙草をくゆらしているのに、気がついた。が、坊主仲間では誰も貰いに行くものがないらしい。そこで彼は折から通りかかった了哲をよびとめて、そっとあごで斉広の方を教えながらささやいた。

河内山は懐から、黄いろく光る煙管を出したかと思うと、了哲の顔へほうりつけて、足早に行ってしまった。

宗俊は肩をゆすった。四方あたりはばかって笑い声を立てなかったのである。

宗俊は、口早にこう云って、独り、斉広の方へやって行った。あっけにとられた了哲を、例の西王母せいおうぼの金襖の前に残しながら。

了哲はそれを聞くと、あきれたような顔をして、宗俊を見た。

了哲は、下唇をつき出しながら、じろじろ宗俊の顔を見て、

それから、半時はんときばかりのちである。了哲は、また畳廊下たたみろうかで、河内山に出っくわした。

「真鍮だろうさ。」

「手前たちの思惑おもわく先様さきさま御承知でよ。真鍮と見せて、実は金無垢を持って来たんだ。第一、百万石の殿様が、真鍮の煙管を黙って持っている筈がねえ。」

「一件た何だ。」

「よし、真鍮なら、真鍮にして置け。おれが拝領と出てやるから。」

「また金無垢になったじゃねえか。」

「どうして、また、金だと云うのだい。」了哲の自信は、怪しくなったらしい。

「どうしたい、宗俊、一件は。」

「とぼけなさんな。煙管の事さ。」

「じゃあれは何だ。」

「うん、煙管か。煙管なら、手前にくれてやらあ。」

「いい加減に欲ばるがいい。銀の煙管でさえ、あの通りねだられるのに、何で金無垢の煙管なんぞ持って来るものか。」

了哲は、ぶつけられた所をさすりながら、こぼしこぼし、下に落ちた煙管を手にとった。見ると剣梅鉢けんうめばちの紋ぢらしの数寄すきらした、――真鍮の煙管である。彼は忌々いまいましそうに、それを、また、畳の上へ抛り出すと、白足袋しろたびの足を上げて、この上を大仰おおぎょうに踏みつける真似をした。……

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