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煙管

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斉広なりひろは、爾来じらい登城する毎に、銀の煙管きせるを持って行った。やはり、剣梅鉢けんうめばちの紋ぢらしの、精巧を極めた煙管である。

彼が新調の煙管を、以前ほど、得意にしていない事は勿論である。第一人と話しをしている時でさえ滅多に手にとらない。手にとってもすぐにまたしまってしまう。同じ長崎煙草が、金無垢の煙管でのんだ時ほど、うまくないからである。が、煙管の地金じがねの変った事は独り斉広の上に影響したばかりではない。三人の忠臣が予想した通り、坊主共ぼうずどもの上にも、影響した。しかし、この影響は結果において彼等の予想を、全然裏切ってしまう事に、なったのである。何故と云えば坊主共は、金が銀に変ったのを見ると、今まで金無垢なるが故に、遠慮をしていた連中さえ、先を争って御煙管拝領に出かけて来た。しかも、金無垢の煙管にさえ、愛着あいじゃくのなかった斉広が、銀の煙管をくれてやるのに、未練みれんのあるべき筈はない。彼は、請われるままに、惜し気もなく煙管を投げてやった。しまいには、登城した時に、煙管をやるのか、煙管をやるために登城するのか、彼自身にも判別が出来なくなった――少くともなったくらいである。

これを聞いた、山崎、岩田、上木の三人は、また、愁眉しゅうびをあつめて評議した。こうなっては、いよいよ上木の献策通り、真鍮の煙管を造らせるよりほかに、仕方がない。そこで、また、例の如く、命が住吉屋七兵衛へくだろうとした――丁度、その時である。一人の近習きんじゅが斉広の旨を伝えに、彼等の所へやって来た。

御前ごぜんは銀の煙管を持つと坊主共の所望がうるさい。以来従前通り、金の煙管に致せと仰せられまする。」

三人は、唖然あぜんとして、為す所を知らなかった。

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