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煙管

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これを聞いた家中かちゅうの者は、斉広なりひろ宏量こうりょうなのに驚いた。しかし御用部屋ごようべやの山崎勘左衛門かんざえもん御納戸掛おなんどがかりの岩田内蔵之助くらのすけ御勝手方おかってがた上木かみき九郎右衛門――この三人の役人だけは思わず、まゆをひそめたのである。

加州一藩の経済にとっては、勿論、金無垢の煙管きせる一本の費用くらいは、何でもない。が、賀節がせつ朔望さくぼう二十八日の登城とじょうの度に、必ず、それを一本ずつ、坊主たちにとられるとなると、容易ならない支出である。あるいは、そのために運上うんじょうを増して煙管の入目いりめつぐなうような事が、起らないとも限らない。そうなっては、大変である――三人の忠義の侍は、皆云い合せたように、それを未然におそれた。

岩田は君公の体面上銀よりいやしい金属を用いるのは、なものであると云う。上木はまた、すでに坊主共の欲心を防ごうと云うのなら、真鍮しんちゅうを用いるのに越した事はない。今更体面を、顧慮する如きは、姑息こそくけんであると云う。――二人は、各々、自説を固守して、極力論駁ろんばくを試みた。

そこで、彼等は、早速評議を開いて、善後策を講じる事になった。善後策と云っても、勿論一つしかない。――それは、煙管の地金じがねを全然変更して、坊主共の欲しがらないようなものにする事である。が、その地金を何にするかと云う問題になると、岩田と上木とで、互に意見を異にした。

すると、老功な山崎が、両説とも、至極道理がある。が、まず、一応、銀を用いて見て、それでも坊主共が欲しがるようだったら、その後に、真鍮を用いても、遅くはあるまい。と云う折衷説せっちゅうせつを持出した。これには二人とも、勿論、異議のあるべき筈がない。そこで評議は、とうとう、また、住吉屋すみよしや七兵衛に命じて銀の煙管を造らせる事に、一決した。

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