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煙管

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では、煙管きせるをまき上げられた斉広なりひろの方は、不快に感じたかと云うと、必しもそうではない。それは、彼が、下城げじょうをする際に、いつになく機嫌きげんのよさそうな顔をしているので、ともの侍たちが、不思議に思ったと云うのでも、知れるのである。

彼は、むしろ、宗俊に煙管をやった事に、一種の満足を感じていた。あるいは、煙管を持っている時よりも、その満足の度は、大きかったかも知れない。しかしこれは至極当然な話である。何故と云えば、彼が煙管を得意にするのは、前にもことわったように、煙管そのものを、愛翫あいがんするからではない。実は、煙管の形をしている、百万石が自慢なのである。だから、彼のこの虚栄心は、金無垢の煙管を愛用する事によって、満足させられると同じように、その煙管を惜しげもなく、他人にくれてやる事によって、更によく満足させられる訳ではあるまいか。たまたまそれを河内山にやる際に、幾分外部の事情に、いられたような所があったにしても、彼の満足が、そのために、少しでも損ぜられる事なぞはないのである。

そこで、斉広は、本郷ほんごうの屋敷へ帰ると、近習きんじゅの侍に向って、愉快そうにこう云った。

「煙管は宗俊の坊主にとらせたぞよ。」

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