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煙管

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斉広なりひろの持っている、金無垢きんむく煙管きせるに、眼をおどろかした連中の中で、最もそれを話題にする事を好んだのは所謂いわゆる、お坊主ぼうずの階級である。彼等はよるとさわると、鼻をつき合せて、この「加賀の煙管」を材料に得意の饒舌じょうぜつを闘わせた。

「さすがは、大名道具だて。」

調子にのって弁じていた了哲りょうてつと云う坊主が、ふと気がついて見ると、宗俊は、いつの間にか彼の煙管入れをひきよせて、その中から煙草をつめては、悠然と煙を輪にふいている。

河内山は、一座の坊主を、尻眼にかけて、空嘯そらうそぶいた。

宗俊は、了哲の方を見むきもせずに、また煙草をつめた。そうして、それを吸ってしまうと、なまあくびを一つしながら、煙草入れをそこへほうり出して、

了哲は慌てて、煙草入れをしまった。

了哲はきれいにった頭を一つたたいて恐縮したような身ぶりをした。

するとある日、彼等の五六人が、まるい頭をならべて、一服やりながら、例の如く煙管のうわさをしていると、そこへ、偶然、御数寄屋坊主おすきやぼうず河内山宗俊こうちやまそうしゅんが、やって来た。――後年こうねん天保六歌仙てんぽうろっかせん」の中の、主な rolê をつとめる事になった男である。

ざっと、こんな調子である。

さすがに、了哲も相手の傍若無人ぼうじゃくぶじんなのにあきれたらしい。

「貴公じゃあるまいし、誰が質になんぞ、置くものか。」

「知れた事よ。金無垢ならばこそ、貰うんだ。真鍮しんちゅう駄六だろくを拝領に出る奴がどこにある。」

「手前が貰わざ、おれが貰う。いいか、あとでうらやましがるなよ。」

「同じ道具でも、ああ云う物は、つぶしがきやす。」

「ふんまた煙管か。」と繰返して、「そんなに金無垢が有難けりゃ何故お煙管拝領と出かけねえんだ。」

「ふんまた煙管か。」

「なに、金無垢きんむくの煙管なら、それでも、ちょいとのめようと云うものさ。」

「だが、そいつは少し恐れだて。」

「そうよ。」

「お煙管拝領?」

「おい、おい、それは貴公の煙草入れじゃないぜ。」

「ええ、悪い煙草だ。煙管ごのみが、聞いてあきれるぜ。」

「いくらお前、わしが欲ばりでも、……せめて、銀ででもあれば、格別さ。……とにかく、金無垢だぜ。あの煙管は。」

「いいって事よ。」

しちに置いたら、何両貸す事かの。」

ほりと云い、地金じがねと云い、見事な物さ。銀の煙管さえ持たぬこちとらには見るも眼の毒……」

河内山はこう云って、煙管をはたきながら肩をゆすって、せせら笑った。

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