奇怪な再会在线阅读

奇怪な再会

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寄席よせへ行った翌朝よくあさだった。おれん房楊枝ふさようじくわえながら、顔を洗いに縁側えんがわへ行った。縁側にはもういつもの通り、銅の耳盥みみだらいに湯を汲んだのが、鉢前はちまえの前に置いてあった。

冬枯ふゆがれの庭は寂しかった。庭の向うに続いた景色も、曇天を映した川の水と一しょに、荒涼を極めたものだった。が、その景色が眼にはいると、お蓮はうがいを使いがら、今までは全然忘れていた昨夜ゆうべの夢を思い出した。

それは彼女がたった一人、暗いやぶだか林だかの中を歩き廻っている夢だった。彼女は細い路を辿たどりながら、「とうとう私の念力ねんりきが届いた。東京はもう見渡す限り、人気ひとけのない森に変っている。きっと今にきんさんにも、遇う事が出来るのに違いない。」――そんな事を思い続けていた。するとしばらく歩いている内に、大砲の音や小銃の音が、どことも知らず聞え出した。と同時に木々の空が、まるで火事でも映すように、だんだん赤濁りを帯び始めた。「戦争だ。戦争だ。」――彼女はそう思いながら、一生懸命に走ろうとした。が、いくら気負きおって見ても、何故なぜか一向走れなかった。…………

お蓮は顔を洗ってしまうと、手水ちょうずを使うためにはだを脱いだ。その時何か冷たい物が、べたりと彼女の背中にれた。

「しっ!」

彼女は格別驚きもせず、なまめいた眼をうしろへ投げた。そこには小犬が尾を振りながら、しきりに黒い鼻をめ廻していた。

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