犬と笛在线阅读

犬と笛

Txt下载

移动设备扫码阅读

それから四五日たったある日のことです。髪長彦は三匹の犬をつれて、葛城山かつらぎやまの麓にある、路が三叉みつまたになった往来へ、笛を吹きながら来かかりますと、右と左と両方の路から、弓矢に身をかためた、二人の年若な侍が、たくましい馬にまたがって、しずしずこっちへやって来ました。

髪長彦はそれを見ると、吹いていた笛を腰へさして、叮嚀におじぎをしながら、

髪長彦はい事を聞いたと思いましたから、早速白犬の頭を撫でて、

そこで木樵きこりはすぐ白犬と斑犬ぶちいぬとを、両方のわきにかかえたまま、黒犬の背中に跨って、大きな声でこう云いつけました。

すると白犬は、折から吹いて来た風に向って、しきりに鼻をひこつかせていましたが、たちまち身ぶるいを一つするが早いか、

すると二人の侍が、かわがわる答えますには、

こう云って二人の侍は、女のような木樵きこりと三匹の犬とをさも莫迦ばかにしたように見下みくだしながら、途を急いで行ってしまいました。

「飛べ。飛べ。生駒山いこまやま洞穴ほらあなに住んでいる食蜃人の所へ飛んで行け。」

「大臣様は大そうな御心配で、誰でも御姫様を探し出して来たものには、厚い御褒美ごほうびを下さると云う仰せだから、それで我々二人も、御行方を尋ねて歩いているのだ。」

「今度飛鳥あすか大臣様おおおみさまの御姫様が御二方、どうやら鬼神おにがみのたぐいにでもさらわれたと見えて、一晩の中に御行方おんゆくえが知れなくなった。」

「わん、わん、御姉様おあねえさまの御姫様は、生駒山いこまやま洞穴ほらあなに住んでいる食蜃人しょくしんじんとりこになっています。」と答えました。食蜃人しょくしんじんと云うのは、昔八岐やまた大蛇おろちを飼っていた、途方もない悪者なのです。

「もし、もし、殿様、あなた方は一体、どちらへいらっしゃるのでございます。」と尋ねました。

げ。嗅げ。御姫様たちの御行方を嗅ぎ出せ。」と云いました。

そのことばが終らないうちです。恐しいつむじ風が、髪長彦の足の下から吹き起ったと思いますと、まるで一ひらのの葉のように、見る見る黒犬は空へ舞い上って、青雲あおぐもの向うにかくれている、遠い生駒山の峰の方へ、真一文字に飛び始めました。

13.55%