翌朝素戔嗚は
彼は素戔嗚の姿を見ると、愉快さうな微笑を浮べながら、
須世理姫はためらつた。
葦原醜男はもう一度、無理に彼女を抱きよせようとした。が、彼女は彼を突きのけると急に海草の上から身を起して、
葦原醜男はかう答へながら、足もとに落ちてゐた岩のかけを拾つて、力一ぱい海の上へ抛り投げた。岩は長い弧線を描いて、雲の赤い空へ飛んで行つた。さうして素戔嗚が投げたにしても、届くまいと思はれる程、遠い沖の波の中に落ちた。
素戔嗚は岩角に
素戔嗚は唇を噛みながら、ぢつとその岩の行く方を見つめてゐた。
傍にゐた須世理姫は、この怪しい親切を辞せしむべく、そつと葦原醜男の方へ、意味ありげな
二人が海から帰つて来て、
しかし葦原醜男は笑ひながら、子供のやうに首を振つて見せた。
しかし幸ひ午後になると、素戔嗚が昼寝をしてゐる暇に、二人の恋人は宮を抜け出て
「御父様が呼んでゐます。」と、気づかはしさうな声を出した。さうして
「御早うございます。」と、会釈をした。
「今夜も此処に御泊りなすつては、あなたの御命が危うございます。私の事なぞは御かまひなく、一刻も早く御逃げ下さいまし。」と、心配さうに促し立てた。
「どうだな、
「ではすぐにも私と一しよに、この島を逃げてくれますか?」
「それでもあなたの御体に、万一の事でもあつた日には――」
「さもなければ私は何時までも、此処にゐる覚悟をきめてゐます。」
「この宮が気に入つたら、何日でも泊つて行くが好い。」と云つた。
「ええ、御かげでよく眠られました。」
「あなたが此処にゐる間は、殺されても此処を去らない
「
後に残つた葦原醜男は、まだ微笑を浮べながら、須世理姫の姿を見送つた。と、彼女の寝てゐた所には、