或日素戔嗚が宮の前の、椋の木の下に坐りながら、大きな牡鹿の皮を
「御父様、この方に唯今御目にかかりましたから、此処まで
鹿の皮を剥ぎ終つた彼が、宮の中へ帰つたのは、もう薄暗い時分であつた。彼は広い
須世理姫は一瞬間、色を失つたやうであつた。
須世理姫はかう云つて、やつと身を起した素戔嗚に、遠い国の若者を引き合はせた。
葦原醜男は彼の言葉に、嬉しさうな
若者は眉目の描いたやうな、肩幅の広い男であつた。それが赤や青の
若者は悪びれた顔もせずに、一々はつきり返事をした。
素戔嗚は娘を振り返ると、突然
素戔嗚は
父親は彼女がためらふのを見ると、荒熊のやうに
二人が宮の中にはいつた時、素戔嗚は又椋の木かげに、器用に
「食物や水が欲しかつたものですから、わざわざ舟をつけたのです。」
「早くしないか!」
「御前の名は何と云ふ?」と、
「はい、ではあなた、どうかこちらへ。」
「どうしてこの島へやつて来た?」
「ではすぐにあちらへ行つて、遠慮なく横になつてくれい。須世理姫――」
「さうか。ではあちらへ行つて、勝手に食事をするが好い。須世理姫、案内はお前に任せるから。」
「この男を早速蜂の
「お前は今夜此処へ泊つて、舟旅の疲れを休めて行くが好い。」と、半ば命令的な言葉をかけた。
「
葦原醜男はもう一度、叮嚀に素戔嗚へ礼をすると、須世理姫の後を追つて、いそいそと大広間を出て行つた。