その内に部屋の中からは、誰かのわっと叫ぶ声が、突然暗やみに響きました。それから人が床の上へ、倒れる音も聞えたようです。遠藤は殆ど気違いのように、妙子の名前を呼びかけながら、全身の力を肩に集めて、何度も入口の戸へぶつかりました。
板の裂ける音、錠のはね飛ぶ音、――戸はとうとう破れました。しかし
遠藤は椅子へ行くと、妙子の耳もとへ口をつけて、一生懸命に叫び立てました。が、妙子は眼をつぶったなり、何とも口を開きません。
遠藤は婆さんの
遠藤はもどかしそうに、椅子から妙子を抱き起しました。
遠藤はもう一度、部屋の中を見廻しました。机の上にはさっきの通り、魔法の書物が開いてある、――その下へ
遠藤はその光を便りに、
妙子は遠藤を見上げながら、美しい眉をひそめました。
妙子は遠藤の胸に
妙子はやっと夢がさめたように、かすかな眼を開きました。
妙子はまだ
するとすぐに眼にはいったのは、やはりじっと椅子にかけた、死人のような妙子です。それが
「遠藤さん?」
「計略は駄目だったわ。とても私は逃げられなくってよ」
「計略は駄目だったわ。つい私が眠ってしまったものだから、――
「計略が露顕したのは、あなたのせいじゃありませんよ。あなたは私と約束した通り、アグニの神の
「私が殺したのじゃありません。あの婆さんを殺したのは今夜ここへ来たアグニの神です」
「私、ちっとも知らなかったわ。お婆さんは遠藤さんが――あなたが殺してしまったの?」
「死んでいます」
「御嬢さん。しっかりおしなさい。遠藤です」
「御嬢さん、御嬢さん」
「だってお婆さんがいるでしょう?」
「そんなことがあるものですか。私と一しょにいらっしゃい。今度しくじったら大変です」
「そうです。遠藤です。もう大丈夫ですから、御安心なさい。さあ、早く逃げましょう」
「お婆さん?」
「お婆さんはどうして?」
「あら、
遠藤は妙子を